山でのアロマセラピー

山へ行く時に必ず持って行くものがある。それは精油を使用した小物で、山の目的やスタイルに合わせてその小物が決まる。
例えば、日本の山小屋に泊まるなら、リラックス出来るラベンダーなどをブレンドした精油の小瓶を持っていき、眠る時に枕元へ置く衣類などに一滴垂らすと気持ちがグッと安らぐ。岩場へクライミングに行く時は集中を高める精油を紙などに付け、その香りを深呼吸してから登るなどしている。時期によっては蚊やブヨなどの虫除けのスプレーを作ることもある。精油の良いところは香りの良いものが多く、知識があると調合することでさまざまな効果が期待できることだ。
虫除けといえば、アフリカでの黄熱病とインドネシアでのデング熱など、蚊を媒介とする感染症対策を思い出す。一般的に標高1000mを超えると蚊には刺されにくくなると言われているので、山に入ってしまえば問題はない。アフリカの村に滞在した時、ホテルの部屋で蚊取り線香を焚きすぎて喉が痛くなり、結局は蚊が嫌うメッシュクロスを被り、虫除けを体に塗って眠っていた。
過剰なまでに一生懸命に講じた蚊対策は今では笑い話の一つになっている。しかし実際にアフリカの山でポーターさんの一人が年に一度起こるという黄熱病の発作に見舞われ、下山してしまった。
何日もシャワーを浴びれない海外遠征登山では、蒸れた足がだんだんと臭ってくる。洗えないときには足用のアロマスプレーを靴下と足に噴霧すると匂いを防ぐことが出来る。乾燥の激しい高所の山歩きにはいつも鼻水が出てきて、次第に鼻の下がヒリヒリしていた。その予防と炎症を抑えるためにビーワックススティックを鼻の下に塗り、それは唇の乾燥対策と並んで必要なケアだった。
また高所での睡眠用の精油ブレンドには多くの人が嫌うバレリアン(セイヨウカノコソウ)を持って行った。それだけだと鎮静作用というよりも強烈な匂いに覚醒してしまいそうなので、メリッサ(レモンバーム)を加えて爽やかな香りに調整すると高貴な香りに仕上がる。
アロマセラピーは山で色々と役に立つにもかかわらず、信頼できる精油を販売する企業が減り、良質なものを手に入れるのが困難になってしまった。
北海道では冬の間、雪に押し潰されていたラベンダーが枝を広げ、枝からは新芽が吹いてきた。今年も夏に咲くラベンダーの開花が待ち遠しい。
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