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バティアン「7大陸アフリカ編5」

今日はレスト日。タッションサポートグッズもうまく使えるようになりピーボトルが得意になってきた。完璧だと思っていたのに深夜に事件が起こった。ボトルにピーが入って行かない!あれ?出ているのにどこへ?おかしいと思っていたら太ももの辺りが生緩くなった。うわぁー!脚につたいもれ。上に持っていくダウンパンツとフリースパンツが大変なことになった。朝を待ちサムに洗濯してもらう事に。細かい説明はせずに洗って乾かしてとにっこり笑顔で頼んだ。

私が一日のんびり過ごしている間に、隊長とジェームスは上に荷揚げへ出かけていった。洗濯物を乾かしながらこの数ヶ月を思い起こす。今日の為にどれくらいのことをしてきたのだろう?医師には頭がおかしいと言われながら、様々な診療科の医師に懇願し、薬まみれになりながらもケニアへやって来た。体調不良からか、単なる不安か理由はわからないけれど毎日涙がこぼれてしまう。チームのみんなは私のために荷揚げをしてくれ食事の準備や身の回りの世話をしてくれる、もう泣いている場合ではない。ゆっくり休んだ翌日はジェイムスを先頭に隊長、アンソニー、ダニエル、ピーター6人で歩き出した。

取り付きまでは荷物を運んでくれ、そこからは隊長とふたりでの行動になる。皆とは一旦お別れだ。登り出しがちょっと難しく戸惑っていると、アンソニーが右だ左だと指示をくれる。息を切らせながら5ピッチ登るとアンフィシアターに出た。そこには昨日のうちに張ってくれテントがあった。4900m、この標高に泊まるのは初めてだ。高山病になりたくないから眠れなくてもいい。

 

 

 

 

 

トイレも失敗しないように外でしよう。夜空には無数の星が瞬き、その音が聞こえてきそうだった。朝になったら軽く食べて出発する。辺りにはうっすらと霜が降り空気がぴーんと体を突く、空に浮かぶ雲は竜の姿をしていた。

雲竜を見たのは屋久島の天空の祠以来の二度目。無線をチェックして登り始める、動くと息が上がり、鼓動が体中に響く。最初2ピッチは比較的登りやすいがそれでも息が苦しい。動いては確保、登っては確保。登るたびに標高も上がり毎回息が苦しい。クライミングのベテランならなんて事はないだろうが、登山靴に手袋をはめザックを背負っているとその重みで岩から剥がされる感覚だった。1ピッチは50メートルロープをフルに使うからとても長く感じる。たまに楽しい、しかし殆どが苦しい・・・。隊長が設置したカムを回収しながら登っていく。
ガスで互いの姿は見えず1人で岩に張り付いている気分だった。

登りながら自分の中の何かと戦っていた。好んで来ているはずなのに、なんでこんな所へ来てしまったのか?と問いかける。だんだん真剣になって来て、隊長とも余分な会話は無くなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

何を掴んででも上へ登ろうと頭空っぽ動いていたら、山頂へ着いた。そこは想像より小さな場所だった。緊張から解放されケニアコーヒーで乾杯。喜びと感動で涙が出るのかと思ったが、出たのは鼻水だった。

 

 

懸垂下降で下山してテントに戻ったのは19時頃だった。もう一泊して翌朝下のキャンプ場に戻る。無線が通じなかったけれど取り付きには皆か迎えに来てくれてとても嬉しかった。

シンプトン小屋に戻ったら全ての荷物をまとめ、さらに下のオールドモーゼス小屋まで降りた。雨が降り足元がぬかるみ、転びながら小屋に着いてビールとウィスキーで乾杯をした。その翌日に登山口に戻った。2016年8月4日アフリカ大陸第二高峰・バティン登頂。

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