ピリオダイゼーション
この間富良野岳を歩いているときの景色を思い出していた。見晴らせる場所で後ろを振り返ってみると長く険しい道が見えた。前を向くとこれから進む長い道が見えた。どんな道でも岩場でも足を一歩一歩ゆっくりと出していれば進むことができる。遠くから見て険しくても目の前の一歩を出し続ければ越えることができるのだと思った。
そして先日、甲府へクライミングコーチの講習と試験を受けに行った時のことである。講義の中で“ピリオダイゼーション”を踏まえてトレーニング計画を立てるという課題があった。これはスポーツの世界ではかなり広く普及している練習計画の作成方法の一つ。年単位や月単位などに期分けして練習のメニューを組み、成果のピークを試合に合わせるように計画するのである。上達していくことだけではなく疲労を溜めないこと、やる気の維持を踏まえて強度や時間と実施数を決めていく。そんな話を聞いていてこれを自分の目標であるエヴェレスト登頂に置き換えて準備計画を書き出してみようと思った。再び富良野岳の道の景色を思い浮かべこれまでの山の経験を思い起こしていた。かつてはマッターホルンを登りたいという思いが明確にあった。だから目標に向かって段階的に山をこなしてきた。屋久島トレッキングから雪山へ、雪山からロッククライミングへ、そして海外での初登山ではモンブランを踏破した。そして念願のマッターホルンに加えアイガーも登り終えることができた。
この時の目標に対する計画の立て方はピリオダイゼーションとは言えないが大まかな流れとしては類似していた。マッターホルンを登った後すぐには次の目標がなかった。鈴木昇己さんのクライミング講習に参加するうちに今の隊長倉岡さんと知り合うことになった。そこでアコンカグア(南米大陸最高峰)へ行きませんか?と言われ突然高所登山をやってみることに。アコンカグアには2回敗退しながら、その間にロシアのエルブルース(ヨーロッパ大陸最高峰)に登ったりしていた。この頃は体験が先にありその体験と失敗を糧に次に向かうというようになっていた。
セブンサミッツを目指そうと決めたのも4峰を終えた辺りから目標が見えてきた。共に登ってきたメンバー達からの良い刺激をいただき、工夫したら自分も登れるのかもしれないと思うようになった。はっきり目標が持てなかった理由の一つには乳がんになってしまった事もある。体調は不安定だったり気持ちも揺らいでいたりと先の可能性を考えられなかった。それでも諦めないで続けていたら6峰踏破していた。そして今、先にあるのは最後の高峰エヴェレスト。これに向けて目の前の一歩をより明確な一歩として踏み重ねたいとて気持ちを引き締めてピリオダイゼーションで計画しよう。自分を客観視するという点でまだ出来ていない事もあるが、目標に向かうために自分に合うやり方で山頂へ向かいたい。
そんな決心をするきっかけになった実技と筆記試験の結果は10月以降となる。
筆記テストは選択式と記述式だった。手書きをあまりしなくなったので漢字が書けない。