クランポントレーニング

今季初の雪山トレーニングで八ヶ岳の硫黄岳へ行ってきた。車で桜平に入りゲートから林道を歩いてまずは夏沢鉱泉へ向かった。キーンと冷えた空気が耳を刺し、八ヶ岳らしい寒さが懐かしい。
鉱泉脇からは山道が始まる。雪は積もっているけれどまだ十分ではなくて少し湿った状態だった。
雪山歩きを思い出しながら45分ほどでオーレン小屋に着いた。服の調整をして少し休んでからテント場を通り抜けて赤岩の頭の分岐を目指した。小屋から離れるにつれて傾斜が出てきて、雪の下に隠れた凍った道が滑る。何度か足が後ろに滑るから途中で練習のためにクランポンをつけた。足置きは安定したけれども、岩が出ていたり階段などに爪をひっかっけそうになったので、捻挫などしないようにと慎重に歩く。
ダケカンバの林から開けた場所へ出ると登山道の両側にハイマツが張り出していて、腕に刺さったり、身体が押し戻されたりもした。
そんな歩きにくさに少し苛つきながら分岐点の赤岩の頭に着くと雪の量が減り、そこからチェーンスパイクに変えた。
景色が広がり澄み渡る空気、風も穏やかで足元がとても楽になったことで軽快に山頂へ向かった。
山頂は想像以上に広かった。10名くらいの人がいて中には軽装な人もいたが私たちは万が一に備えて装備にはロープもハーネスも持ってきた。
北米大陸最高位峰・デナリへ登ったとき、とても天気が良いのに山頂へ幾つかの寝袋などの装備を運ばされたことを思い出した。他のチームはフットボールフィールドと呼ばれる山頂下の広い場所に不要な装備を置いて身軽に歩いていたにも関わらず、私たちのチームはそれを許可されなかった。山というのはいつ天気が変わるかわからな、不要なものを減らしつつ、危急時に備えることも考えなくてはならない。

2019年デナリ
そんな思い出に浸りながら山頂から爆裂火口壁を背に夏沢峠の方へと降り始めた。
下り道は急傾斜で風が強まり始めた。硫黄岳は冬場は風が強くて登頂できないことも多いと聞いたので山頂へ行けてよかった。樹林帯に入ると風が遮られ、寒さを感じていた体は急に熱くなる。下へ降るほどに緩やかな道となり、山頂から30分ほどで山彦荘に着いた。一休みをしてから朝に通ったオーレン小屋に着きテント場の脇でコーヒータイム。
駐車した桜平までのアスファルト道は緩やかな下り。うっすらと凍った雪道は登山靴だけで歩くには緊張した。今回の雪山トレーニングは強度がちょうど良い。前日は雪、明日からは強い寒波が入る、その合間に登れたことにとても感謝している。