太忠岳
6時半に開くお弁当屋さんで笹の葉弁当を買い、早めに登山口へ向かった。山を走り標高が上がって来ると、雲の多い青空が広がってきた。駐車場からは目指す山頂の天柱石がはっきりと見えている。出発の準備をしていると男性が近寄ってきて通行止めの知らせがないのに、途中から行けない他に道はありますか?と言う。この為に来たのに、、、とがっかりして俯いていた。昨夜のトミーとの話からしても行かれるはずだと思った。入り口の管理事務所には何も掲示されていない。二人は私たちの後について一緒に歩くことになった。橋を渡ったところにゴムが張られ”登山道調整中”とある。そこをくぐり、足元に気をつけて先へ進んでいくと水が溜まり歩きにくいところはあるものの問題はない。周遊コースから登山ルートへ進み、まずは蛇紋杉で一呼吸。そろそろ雨が降り出す予報の時間、木々の間から空を見上げるとまだ青色がある。
歩くのが心配だと言っていたあっちゃんも森を楽しんでいる。さらに天文の森へ向かいそこで休憩をした。
雨の日の昔話を思い出して一人で笑っていると、道は少しづつ急になり、山頂へ近づくにつれて森が少しずつ暗くなってきた。
急な上りが終わり大きな岩の下で休んでいると上からポツポツと雨粒が落ちてきた。そこからはなだらかな道が続きもう少しで山頂に行ける。まだ誰も歩いていないようで蜘蛛の巣がいくつも張られていた。最後の大きな岩をロープを掴んで登ると天柱石の下に出る。晴れていると目の前に海が広がり、その先には種子島も見える。今日はもちろん目の前に白いガスが立ち込めていて、岩のてっぺんを見上げると雨粒が顔を打ってくる。
しばらくしたら二人も上がってきて、よかったですね!と声をかけた。私たちは山頂を後にして雨が避けられる大岩の下でお昼を食べることにした。お湯を沸かしてお腹を満たし、しっかり休んでから滑りやすくなった道を下る。下っていくと天文の森には雨にお弁当を湿らせながらもご機嫌な海外の二人と別の女性が二人に出会った。きっと彼らはここで引き返すのだろう。蛇紋杉まで戻ると今度は東屋には8人くらいのグループが賑やかにお昼を食べていた。そこから登山口へは来た道の最短ルートで戻り、来る時にあったゴム紐は撤去されていた。
あっちゃんとはクライミングを通じて知り合いになり、二人でクライミングへ行ったこともある仲である。彼女は数年前にクライミング中の事故で足を複雑骨折。手術をしてリハビリに長い間励んできた。その当時は山歩きもクライミングも今後できないかも知れないと絶望的な気持ちでいたという。今はクライミングに復帰して、山歩きもできるようになった。そんな彼女にとって今回の屋久島歩きはどこまで歩けるのだろうかという不安を抱きながらの挑戦だった。
整備された登山道でも屋久島の森は木の根が張り出した道が多く、木の梯子に丸太の階段もあって決して歩きやすい道ではない。それでも森の空気や心地良い潤いが気持ちを軽やかにしてくれて私が何度でも訪れたい島になった。天気と山神様が私たちを山頂に導いてくれたのだと思う。またあっちゃんと一緒にこの島を歩きたい。