退院して抜糸

退院して抜糸も終わり、ようやく一区切りとなった。入院生活は治療を受けるだけでなく、食事や掃除まで身の回りを整えてもらえる、いわば至れり尽くせりの環境で、正直なところ私はその快適さが好きだった。術後の経過は良好で、口の中の痛み以外は大きな問題もなかった。ただ、病院食は栄養バランスを考えたメニューとはいえ、衛生管理のために野菜はしっかり加熱されており、果たしてどこまで栄養が残っているのかは分からない。野菜不足か、あるいはストレスか・・・理由は不明だが、口の中の傷は治りやすいと診断されたものの口内炎は治らず、むしろ増えてしまった。
ドレインバッグには血液がほとんど溜まらず、二日で抜去。思ったより早く退院することができた。帰宅後しばらくは口内炎に悩まされたが、落ち着くと食欲も戻り、体力も回復していった。外来診察で抜糸を終えたとき、気になったのは「いつから動いてよいのか」ということ。医師からは「三か月ほどは傷口にテープを貼って様子を見ること」「今週は静かに過ごすこと」との提案を受けた。一方でゴルフは翌週から許可。クライミングは二か月ほど控えるように言われた。広背筋の筋膜を剥がしているため、激しい動きをすると血腫ができる可能性があるという。
傷口は7センチほどで十針以上縫った。聞きたいことは他にもあったが、ボクシングやドラムのことまでは質問しなかった。そこで自己判断で、まずはリハビリを兼ねてドラムを叩いてみると特に問題はなし。数日後にはゴルフのアプローチとパターの練習を始め、今週からはクラブを振る練習も短時間ながら再開した。次はボクシングにも挑戦したい。左手のジャブを多めに出しつつ、筋トレで全身の動きを確認してみるつもりだ。最近は傷口の痒みもあり、適度に体を動かした方が落ち着く気がする。少しずつ生活リズムを戻し、涼しくなる頃には全開で動けたら幸運だろう。なお、生検の結果は良性で、形成外科への再診も不要となった。
忘れられないのは、手術のときの本人確認だ。入院中は何をするにも名前を告げ、リストバンドを読み取り、治療内容などが記録された。手術台に上がった時にもアレルギーの確認が行われ、「えび、さば、ヨモギ、すぎ、ヒノキ、蛾・・・・」と読み上げられて、「はい、間違いないです。ただ、手術には関係ないですね」と返すと、場が和んだ。事故防止は重要だが、明らかに無関係な項目を真剣に確認する、その”決まり事の徹底”が妙にツボに入り、思い出すたびに笑わずにはいられない。
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