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屋久島2025

今年は5名のメンバーで屋久島を訪れた。食事を囲みながら天気予報を確認し、まずは足慣らしとして白谷雲水峡へ向かう。この場所は、私にとって屋久島で初めて歩いた思い出の森でもある。

登山口の手前で風景を撮影していると、突然左足首に痛みが走った。驚いて振り返ると、車が私の足に軽く接触したらしい。運転手は慌てて車から降り、心配そうに声をかけてくれた。恐るおそる足首を確認すると、痛みはあるものの骨折の気配はなく、擦り傷程度。運転免許証の写真と連絡先を控え、歩きながら様子を見ることにした。

雲水歩道の一部が通行止めとなっていたため、今回は楠川歩道を歩くことに。初来島のN夫妻は、歩くうちに少しずつ表情が柔らぎ、私もつられて笑顔になる。数日前の大雨で沢の水量が増しており、最初の渡渉では岩を大きく飛び越えなければならなかった。道の一部は小川のように水が流れ、森の苔はしっとりと潤い、陽の光を受けてキラキラと輝いていた。

苔むす森でゆっくり休憩を取ったあと、太鼓岩を目指してさらに歩を進める。森は次第に深まり、時折現れる木々の造形から、自然の逞しさと静かな迫力を感じた。

ふと視線を遠くにやると、角を生やした鹿がこちらを振り返って見つめていた。数秒間、互いに見つめ合い、鹿は静かに森の奥へと消えていった。

思っていたよりも冷たい空気に季節の移ろいを感じながら、太鼓岩へ到達。開けた景色の向こう側には宮之浦岳、永田岳、そして太忠岳の天柱石までが一望できた。

辻峠から辻の大岩へと移動して昼食をとり、下山を開始。登山口近くに戻ると、朝の運転手が心配そうに「大丈夫ですか?」と声をかけてきた。「登って、下りて来られたので、大丈夫です」と答えると、自分でも笑ってしまうほど痛みを忘れていた。幸い大事には至らず、警察や病院のお世話になることもなかった。まさか撮影中に後方からタイヤに足を擦られるとは思いもしなかったが、せっかくの屋久島を『事故の思い出』にしたくはない。


ただそこにいるだけで癒される白谷雲水峡。ここは、私の登山人生の原点でもある。

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