登山ガイド更新研修
登山ガイドの更新研修は屋久島で受ける、というのがいつの間にか私の中での決まり事になっている。1月の屋久島は、いつもの宿も他のホテルも閉館しているところが多い。そのため、島に通い始めて15年以上になるが、今回は初めて民宿に泊まることになった。私がホテル泊にこだわってきたのには理由があり、それは登山後の足や膝にとって、床での生活がなかなか辛いからである。もっとも、今回は研修であり、歩行距離は短いため、その点についてはまったく問題がなかった。
実際に泊まってみると、この民宿は意外にも居心地が良く、夕食のおかずも豊富で、アレルギー対応までしてくれる。広い部屋を予約したため、ユニットバスとトイレは室内にあり、登山用品を思いきり広げることもできた。山での昼食を調達する”かもがわ”の店も歩いてすぐの場所にあり、立地としても申し分ない。
畳に布団を敷いて寝ることだけは少々体にこたえたが、それもまた、普段ベッドで眠れることのありがたさを再確認する良い機会であった。

更新研修は2日間にわたって行われ、内容は2年前とほぼ変わらない。ただし、その多くは普段使うことのない技術ばかりである。参加にあたり、テキストを引っ張り出し、結び目の名称や結び方を慌てて復習し、誰かが配信している動画をいくつも見ては練習を重ねた。
どれも重要な知識ではあるが、緊急時の対応が中心であるため、日常的に使う場面はほとんどない。だからこそ、忘れかけていることを研修を通じて改めて頭に叩き込む時間は、非常に貴重であると感じる。

とはいえ、毎回きちんと再現できるかどうかは心もとなく、参加するたびに決まって緊張する。
中でも一番苦手なのは読図である。地図を見て、何をどのように判断すればよいのかが、正直なところよくわからない。研修では実際に山へ入り、講師からいくつかの課題が出された。思っていたよりもスムーズにクリアできたものの、いざという場面で本当に活用できるかどうかは未知数である。
現在ではスマートフォンのGPS精度も向上し、紙の地図は携行していても、アプリに頼る場面が増えているのが現実だ。
以前、フランスのシャモニーを訪れた際、知人が遭難したことがあった。そのとき現地のレスキュー隊から、アプリを使って本人に居場所の座標を確認してほしいと依頼され、その情報をもとにヘリコプターが救助に向かった。海外においても、スマートフォンの位置情報はすでに重要な救助手段となっている。

それでも研修では基本に立ち返り、国土地理院の地形図を用いて知識と技術を確認する。該当する地図を広げてみると、10メートルごとに引かれているはずの等高線が、驚くほど見えにくい。2年前までは問題なく見えていた線がぼやけ、正確な読図を行うには、その前に眼科を受診する必要があることに気づいた。

しかもその事実に気づいたのは出発直前であり、今からではどうにもならない。アプリであれば指で拡大できるが、印刷された地図はそうはいかない。
結び目の練習は、泥縄ながらも何とか形になったが、読図に関しては身体的な限界を気が付かされる結果となった。経験を積むことで深みが増すこともあれば、年齢を重ねることで新たな戸惑いが生じることもある。そんな現実を静かに受け止めるところから、今回の研修は始まった。

研修メンバーの一番気に入った家、本人の許可を得て撮らせていただきました
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