キャンプ3へ 「エヴェレスト ~7大陸アジア編38」2019年

5月23日、夜中には収まっていた風が日の出の頃から再び強まってきた。朝食を済ませても今日の出発時間が決まらない。隊長はベースキャンプにいるカリーとの無線連絡を何度も取り交わしていた。天気の確認や先発隊のヨーロッパチームは登頂したことを聞いた。しかし彼らは山頂付近の混雑などで身動きが取れないでいると言う。リーダーのアンドレアスには可能な限り下へ降てくるように指示を出していた。
私たちは何時にC3へ出発するのなかなか決められなかった。明日登頂するのは私たち・・・・・。外の風は依然として強いが、明日の午前中は弱まる予報になっていた。明日山頂へ行くには今日C3 へ向かわないとならない。天気の悪い日に登頂する山ではないと幾度となく聞かされていた。最終的に11時頃出発の予定が実際には12時頃になった。
風が強いまま、とても歩きにくい足元のガレ場。フィックスロープにつながると、ロープを共有する下の人に引っ張られる。横に回りたいのに大きな岩をよじ登ることになったり、かなりのストレスだ。風に負けないように必死に歩き1時間登ってもまだC2の上部に着いただけ。少し広い場所で休みながら無線連絡をとる。このままのペースで進んだら、予定時間内にC3には辿り着けない。つまり酸素が足りなくなる。倉岡隊長は今回はここで引き返すという決断を下した。
その言葉にため息と共に少しホッとした気持ちになった。荒れ狂う風の中7750m付近から引き返し始めた。フィックスロープがなかったら飛ばされていただろう。C2まで降りる時も気が抜けなかった。