アドバンスドベースキャンプへ「エヴェレスト ~7大陸アジア編14」2019年
4月29日朝早くからムーラの鳴き声で起こされた。鼻を響かせるブルブルと言う音が真横で聞こえていた。中間キャンプではヤクがテントの近くで一緒に寝ているのだ。さらに朝食は7時からなのに、6時過ぎからムーラ使いが荷物をよこせと言ってくる。うるさい!まだ寝ているのにとシュラフに潜る。それでもしつこくて隊長が怒り、時間を指示した。簡単な朝食を済ませて8時ちょっと前にABCへ向けて出発した。
今日もゆっくり歩き。けれどもいきなり始まる斜面に足がなんとなく重たい。歩き続けているとどことなく頭が締め付けられてキュッとなったりもする。休むと楽になり、動くとまた頭が重たい。遠くに見えるエヴェレストの山頂を見て気持ちを引き締めとにかく歩く。
休憩が嬉しくて、それ以外は辛さが増していった。周りの景色が凄い、でもそれを楽しむ気持ちの余裕はなかった。
登頂した人達ってすごいなぁ、と急に今まで以上の尊敬の思いが起こったりした。
時が経つにつれて、時間や距離の感覚が掴めなくなって、精神的に揺らいでいた。急に涙が出てきたり(目の乾燥で風にあたってもそうなる)イライラしてメンバーにきつい言い方をしたりと平常心ではなかった。とにかく呼吸をしっかり、足を前に置く。それだけを繰り返えせばいいのだと自分に言い聞かせる。辛い瞬間に日本で応援してくれている方々の顔も浮かんで来てそれによって少し力が湧いてきた。行き先の向こうから荷物を運び終えたムーラ達が中間キャンプに戻って行く、本当にありがたい。
休憩と歩き出しを繰り返しているうちに先の方から数人がこちらに向かって来るのが見えた。しばらくするとそれが私たちのシェルパさん達とわかった。大きな水筒にミルクティーとスナックを持ってきてくれていたのだ。朗らかな笑顔で差し出される飲み物がとっても美味しくて嬉しくて思わす泣きそうになった。この休憩が済んだらもうすぐそこにキャンプがあるのだと期待してもう一踏ん張りの気合いを入れた。でも実際はそこから90分以上あってその遠さにはため息が溢れた。
中間キャンプ(5800m)から8時間ぐらいかかりようやく今日の目的地アドバンスドベースキャンプ(ABC/6400m)に着いた。しばらくは放心状態になってダイニングテントで休んでいるとインスタントラーメンが出された。これはいつも大変な日の後に出てくるのだと分かった。
2019年4月29日 ABC入り