A.B.C.での順応2「エヴェレスト ～7大陸アジア編18」2019年

5月4日、昨晩は夜中じゅう雪がテントを打つカサカサという音が聞こえていた。
酸素を吸わずに寝る夜はまだ苦しくて、朝はすっきりしない気分でテントの外へ出た。
辺りは白く、10センチ以上の積雪でキャンプ場の景色がガラリと変わっていた。

昨日アンドレアスから天気が崩れると聞いていたけれど私たちは朝食を済ませ下山せず、順応トレッキングへ行くことになした。
前回よりも高く遠いところまで行く。
まずはクランポンポイントへ向かい、そこからはアイゼンをつけて歩いた。

この間来たところからさらに先へ進みノースコルへ上がるフィックスロープの取り付きに来た。

荷物はそこに置き、空身にハーネスを付けてユマールとストックを持って登りはじめた。
ここまでは比較的平坦な道からガラリと変わって傾斜が始まる。高所での動きの変化は体が慣れなくて少し動くだけでも息が苦しい。息が切れて、はぁ゛はぁ゛いいながら立ち止まったり。
他のメンバーは苦しそうには見えず、元気に動いていた。

ロープを架け替えながら3本のフィックスロープを登ったところで少し休みそこから引き返すことにした。
下りはロープを握ったり腕に巻きつけて降りる。

平坦なところは問題はないが、斜面では息が苦しくて思うように動けなかった。
キャンプへ戻ると全身が重たくて、頭が締め付けられるような感じがした。

今までに経験したことがない感覚で、服や靴を脱ぐのも、飲み物を作ることも何もできない。
ただ座って呼吸だけしている状態だった。
高所経験豊かな酒井さんに相談すると、こんなもんだという。
動けない・・・このままどうなってしまうのだろうか？とぼーっとするばかり。
食欲もなくなり夕食も3口ぐらいしか食べられなかった。
身の回りの物も自分で運べず、テントまでスーさんに運んでもらった。
寝る準備をして横になると朝まで余り目が覚めずに眠り、次の朝には少し元気を取り戻した。