審判員
リードクライミングの審判を務めた。今までにも何度か審判員としてクライミング大会のお手伝いをしてきたが、リードを担当するのは初めて。ずっとやりたいと思っていたから今回の依頼は非常に嬉しい。
リードクライミング競技は選手とビレーヤー(安全確保する人)が一つのロープに繋がり、制限時間内にどこまで高く登るかを競う種目である。会場は山梨県にある小瀬スポーツ公園での関東の小中学生の選抜選手権大会。前日に公開された予選ルートのデモストレーションを選手のように一生懸命見て、当日会場へ向かった。
曇り空で肌寒いのでカイロを貼り、重ね着して臨む事になった。採点は二人ひと組で一つのルートを担当することになり、私はベテランのM氏と組みローカルルールの確認をした。私の役目はストップウォッチで時間を計りながら、ルート図にスコアを記録する事だった。選手は登るルートを見る時間40秒と登る時間6分が与えられる。M氏から選手に途中で残り時間聞かれたら答えるように言われ「計算するのですね、、、6分から引くのは大変ですね」と答えた。タイマーの暗算はほとんどやったことはなく、即答できるのか不安だ。
タイマーを止めるのは落ちた時と完登時の終了点にロープを掛けた時。見てて落ちそうになる時もあれば、不意に落ちることもある。2回ほど押し遅れてしまったが、結果に影響しないので訂正してもらった。予選では二人の選手が使用してはならないホールドに足を使っているように見えてビデオ判定も行った。予選が終わると休憩を挟み午後からは決勝が始まった。
雨が降り出し次第に強まってきた。風はなくクライミングウォールには雨が当たらないので競技は続いて行われていた。決勝からタイマーの管理が2つになり操作は煩雑になった。更に用紙が雨に濡れないようにビニール袋の中で記入するのも手間がかかる。上へ登っていく選手を追いかけて顔を上げると雨粒が目に入るなど様々なやりにくさがあった。そんな状況でもM氏は朗らかで気分がどんよりすることもなく集中力を維持することができた。
そして最後の選手が登り始めた。トップまで登り、最後のクリップをするところでロープが出ない。なんとビレーヤーが誤ってロープを引いてしまうというテクニカルインシデントが発生した。ハラハラしながらも私のやることはクリップし終わるまでタイマーを止めないことだ。そしてM氏が選手に駆け寄り、インシデント対応として登り直しをするかの確認をすると、選手はそれを断った。もう一人トップまで登った選手がいて最後のタイムロスがなければ順位が逆転していたかもしれないのだ。リードクライミングの審判員としては無事に役目を果たしたが、起こったインシデントには言葉が出なかった。
選手の力が上がってきてますます今後の活躍が楽しみなのと色々な事が起り忘れられない大会となった。