BC からアイスフォールへ「エヴェレスト~7大陸アジア編34」2023年
私たちのキャンプサイトは細長いベースキャンプの入り口に近いところにある。村から歩いてくる時にはキャンプに近いけれど、エヴェレストに登りに行くにはアイスフォールの袂まで30分以上歩くことになる。今朝はなんとなく食欲がなくて食べる量が少なかった。そしてこれからお昼までアイフォールの入り口へ行くことになった。ベースキャンプを端から端まで歩き、ハーネスやクランポンを付けて少し登る練習をする。ベースキャンプの足元は岩や大きな石がゴロゴロとしていて、高所用の靴だととても歩きにくく今までの散歩の様にはいかない。
アイスフォール下へ向かう手前の開けた場所には登りに行く人の他に観光にきている人など30人ほど来ていた。観光の人たちは雪壁の前で記念撮影をして話したりと笑い声が沸いているけれど登山に向かう人達は皆ほぼ無言で黙々と歩いている。広いところの終わりで休憩しながらハーネスをつけて、雪が溶けた沢を何度か渡り傾斜が出てくる前でクランポンを履いた。
クランポンポイントと呼ばれているところには今開けたばかりの空の箱がいくつも置かれていた。そこから先は氷と雪の斜面が続き、アイスフォールの始まりのところから突如ほぼ垂直の雪氷の壁が出てきた。そこからはロープにユマール(登高器)をセットして、壁の凹みに足を乗せたり蹴り込んだりして体を上げてゆく。4年ぶりのユマーリングは垂直壁から始まったが、やってみると体が思い出したようで息苦しいけれども楽しい!という感情が起こった。
今までやってきた事の成果を自分で感じられたことがとても嬉しい。息を弾ませながらいくつかのフィックスロープを登り、ロープの架け替えの登り降りをして、最後は懸垂下降で今日の練習を終えた。降りるときには懸垂下降を練習しているチームがいた。他の高所の山では見られない光景だけど、初めての懸垂下降やクランポン歩きの練習をここでするのはエヴェレストならではなのかもしれない。
お昼を食べてくつろいでいると日本からのメールと家族からのWi-Fi電話があった。ちょっとした話しやメールにとても励まされて、心も体も楽になり嬉し涙と共に気持ちが乗ってきた。シェルパさんたちの力を頼りに一歩づつ上に行けたらいいなと希望も湧いてきた。あとは人を気にせずにどのくらい自分に集中できるかにかかっている気がする。今日は4月最後の日、山生活が1ヶ月以上経って今日が一番気持ちが幸せな日となった。