ヴィンソンマシフ・山頂へ「7大陸南極編5」
毎日が忙しい三ヶ日、日本のお正月を思うこともなく毎日が過ぎていた。天気が何よりも優先だから休まずにアタックは明日4日となった。2班に分かれロープをつないで歩き出す。緩やかで長い道のりは今までと変わらない。寒くなることを見越してダウンパンツを履いていたが、天気良く気温が-5度位、動いているととても暑い。
その暑さにのぼせて次第に頭がぼうっとしてきた。雲ひとつない真っ青な極の空、眩しく鋭い白銀色の雪原は山々で360°囲まれている。白夜だから時間を気にしなくても良い。歩いていると段々と体が動きにくくなり、休憩が欲しい。星野さんの決断は早く、不要な荷物を置き始めた。私も不要なものを一緒に置かせてもらった。
休んでも疲れが取れない、歩くペースが私には早くてゆっくりでとお願いした。しかしゆっくりにはならなかった。倉岡さんチームは振り返っても見えない。山頂が近ずいているにも関わらず体が重く気持ちが滅入ってきた。応援してくれる人を思い出しては推進力にし、またしばらくすると何かが引き止めようと働く。休んでも回復できないなんて。ここを上がれば山頂と言うところですっかり諦めモードになってしまった。
魂が抜けかかって雪の斜面に座り込んでいたら、後ろから隊長のチームが見えた。よし、そっちに移ろう!と思ったら私より早く星野さんがロープを解いた。私も移りたいと強くお願いして二人とも移籍完了。倉岡さんに「登りたい意欲はありますか?」と聞かれ、強く頷いた。ロープをつないだら一歩一歩ゆっくりと進み出した。もう歩けないかと思っていたのに、隊長の背中に希望の光を見た。傾斜はドンドンきつくなるけれど、動きは軽やかだ。
気分が悪いというsaki、叫んでいる星野さんに、無言なsasaそんなギリギリチームが一歩一歩山頂へと向かう、尾根に上がったら早いチームが頂きの方に見えた。
雪を被った岩陵を進むと少し広くなったヴィンソンの頂上に立った。
全員登頂、そしてハイキャンプまで戻った。塩ラーメンがご馳走。
2017年1月4日南極大陸最高峰・ビンソンマシフ登頂。