キャンプ4~サウスコルへ「エヴェレスト~7大陸アジア編41」2023年
予定通りにペンバーが朝4時前にお湯を持って来てくれた。ちょうど外が明るくなり始めて、なんとなく目が覚めていたところだった。朝ごはんを食べてから今日の準備に取り掛かった。トイレは倉岡隊長からもらった携帯トイレを使いテント前室の狭い空間を使ってなんとか済ませた。外は隣のテント同士がくっついていて、通りには人が行き交っている。他のメンバーもトイレの場所には困っていたようだ。
これからサウスコルへ上がる。テントサイトのフィックスロープにセルフをとって歩き出すと、上部に泊まっていた人たちがロープの列に加わってきた。前の方でどんどん人が割り込んでくる状態になり前に進むことができない。どうにも対処できないから諦めてゆっくりと動くしかない。
その先を見上げると、丘状の傾斜にたくさんの人が鈴なりになっている。びっくりして声も出なかったが、その流れに沿って歩くしかない。フィックスロープを外れて動くにはスペースがなかったり、危険だから簡単に抜かすこともできない。その状況にあっきーはぐずぐずしないで行こいうよ!頑張らないと!と厳しい口調で言った。それに苛立ってしまった私はうるさい!やってるよ!と言い返した。混雑していたので、本来歩くのが早い荷上げチームも私達と同じペースで一緒になって進んでいた。
なかなか動くことができないまま次第に高度が上がると、少しづづ人の列がばらけてきた。ローツェフェースと呼ばれる斜面はトラバース(横切る)する道幅が狭いだけでなく谷へ向かって足元が斜めになっていた。
サウスコルへ上がる手前には50メートルくらいの雪の壁もあり、ユマールを上に動かしながら段差を登るのには息が苦しい。そこを超えると岩場と板状の石に雪と氷が付いた道になってきた。平らな道になると足の重さを感じるようになり、足を交互に前に置きながら大きく回り込んだ先にキャンプ場が見えてきた。
サウスコルのキャンプ4は広大な場所で今回の最終キャンプ地である。デスゾーン手前の7900mの世界は生き物の存在はなく、足元はゴミだらけ。色々な国の食料の袋や缶などは自然には分解しそうにないものばかりだった。日本語の袋もあってより悲しい気持ちになった。昨日は途中で亡くなった人がロープに繋がれていたけど、今日はそういう人がいなくてよかった。
粉雪の舞う中私たちのテントをシェルパさんが建ててくれた。風が強く、じっとしていると体が冷える。そして、酸素とテントを運んで来る予定のプリタがキャンプ2で体調を崩しベースキャンプへ降りてしまった。だから、ここでのテントは足りなくなり4人で一つのテントを使うことになった。4人と荷物が入ると足を伸ばすことも出来ない。窮屈な状態では今日の8時間30分の移動の疲れすら感じることはなかった。今日の渋滞を考慮してスタート時間を話し合い、今日の20時に出発することになった。準備などで寝る時間はない。登頂へ向かうときにはトイレに行くのは難しいのでオムツを履いておきたい。畳2枚程度のスペースで男性3人にオムツを履きたい宣言をして足が攣らないように着替えを済ませた。少しでも休んでおきたいので荷物に埋もれながら目を閉じ15分だけじっとした。
目を開けて出発前の食事を済ませ、飲み物をワンピースの内ポケットに入れた。靴を履いて外に出てハーネスとクランポンを履いた。夜の暗闇の中で目指す山頂方面の斜面にはいくつかの明かりが揺らいでいるのが見えた。