ベースキャンプへ「エヴェレスト~7大陸アジア編44」2023年
疲れ過ぎてなかなか寝付けないまま、明るくなると自然と目が覚めた。
寝ている間にとても喉が渇き一晩でポットのお湯を全部飲み干した。それでもおしっこはあまり出なくてオレンジジュースのようになっていた。かなりの脱水状態なのだと思う。
テントから出ようとしても体が重く動きたくない。朝ごはんを食べにダイニングテントに行けないかもしれないと天井をぼーっと見ながら寝転んでいた。暫くするとアンプルバがお湯のポットと食事を運んできてくれた。動けない事を知っていたのかもしれない。
お餅と卵焼きにスープ、この朝ごはんは今までの人生で一番美味しい食事だった。特に鶏肉のスープはおかわりしたいほど体が欲していた。これからベースキャンプへ降りるので荷物をまとめたいが、食べ終わるとまた横になっていた。お昼ご飯もテントに運んできてくれて、午後から天気が崩れ始めるのでなるべく早く出発したいと告げられた。
急ぐように言われても体の力は入らず、頭もぼーっとしたままだ。寝袋を詰める事がうまくできなくて、身の回り品を袋に詰める作業にも手間取っていた。
個人テントは撤収され、私はペンバーと隊長の3人で歩き出した。少し動き出すとさっきまで重たかった体が楽に感じてなんだか歩くのが楽しい。隊長は足の複雑骨折の手術を2回受けてまだ完全な状態ではないのだろう、先に歩いて行ってくれと言う。ペンバーと二人で軽快に歩き続けていたらキャンプ1の手前で霧のような雲で辺りが真っ白になった。振り返っても、周りを見ても方向がわからない状態になり、風が吹くと少し視界が開けてまた見えなくなったりしていた。
ペンバーは隊長のことが心配だからここで待とうと言う。確かに心配である、20分位待っていたら視界が完全に晴れ隊長の姿が現れた。クレバスがあるから見えるまで止まっていたと言う。キャンプ1からはミンマとミマカンサの5人で行動することになった。
アイスフォールに入り下りていると数日前とは形が変わっていることに気づいた。
気温も少し上がりベースキャンプが近づくとルートの側で雪崩が2回起こった。その度にペンバーが壁側に避けろと声を上げる。収まった後は雪崩風で飛んできた粉雪にまぶされ全身が真っ白に。ベースキャンプに戻ったのは19時30分過ぎ、ここへ戻って来れてとても嬉しい。荷物を置いてダイニングへいくと、みんなが揃いお祝いの宴が始まった。
全員で乾杯をしているとご馳走が運ばれてきて登頂できて無事に戻れたことを祝った。
ここまで戻れて本当によかった。まだ登頂した実感は湧かない。